アメリカ「自警団」の台頭、そして”militia”という語
トランプ大統領とバイデン氏の息詰まる攻防が続き、どちらに転んでもおかしくない様相を呈しているアメリカ大統領選。そんな中、アメリカ国内で「自警団」、"militia"と呼ばれる組織が全米各地で台頭してきました。
「自警団」という存在、その言葉の響きが、いかにもアメリカらしいと思います。銃を持ち自分の身は自分で守る、開拓時代から脈々と受け継がれる自立の精神は、やはりアメリカ人の文化的コアの一部なのでしょう。銃を規制しようとすれば必ず議論が沸騰し、なかなか手放そうとしない層が多く存在するのも、その精神性から来るものだと思います。日本(人)で言えば何がそれに対応するでしょう…? いい例がすぐ思い浮かびませんが、お祭りでの「ケンカ神輿」はあぶないから規制・廃止しろ、と言っても、「日本古来の伝統にケチつけるのか」と、かたくなに反対する人が必ず出る、そんな感覚でしょうか…? すみません、脱線しました!
「自警団」は"militiaという語がつかわれている、いや逆に、militiaという語に日本のマスコミが「自警団」という語をあてているようですが、果たして的確な表現なのでしょうか?
手元の英和辞書(新グローバル英和辞典 第2版 [三省堂])には、以下のように出てきます。(n. )
どちらかと言うと、自分の周囲を「自警」=”守る”というよりは、積極的に外に出ていって戦う、そんなイメージでしょうか。浦澤直樹先生の漫画、『パイナップルアーミー』『Master キートン』などに出てくる、「傭兵部隊」のようなイメージかと思います。
かたや「自警団」を調べてみますと(同新グローバル英和辞典)、
vigilance committee…(名)自警団
がヒットします。vigilante(自警団員)、vigil(寝ずの番)も類縁語ですね。
こちらの語の方が、本来はよく想像されるような「自警団」に近いイメージなのでしょう。よって、現在アメリカで結成されているmilitiaは、どちらかといえば「義勇兵」というような、よりアグレッシブな、外的を積極的に排除するという意味合いを持つ組織なのでしょうね。考えてみれば、持っている銃もものものしいものばかりで軍人のようですし、日本の自治体でごく稀にみる棒だけを構えた「自警団」とはやはり質を異にするものなのでしょう。
ちなみにmilitiaの発音、大変恥ずかしながらこれまで「ミリティア」と思っていましたが、正しくは「ミ(メ)リシア(シャ)」(məlíʃə)となり、「t」部分は擦過音なのですね。考えてみれば、initial、confidentialなど、同じような発音をする語はたくさんありました。強いて言い訳(笑)するとすれば、militiaはtiの後が母音で終わるという、珍しいパターンの語であったということくらいですが(ちなみにラテン語起源の語のようです)、いずれにしてもお恥ずかしい限りです…笑。この点では、マスコミの表記が正しかったですね。
Go to トラベル, Go to Eatという名称について ~ やっぱりヘンじゃない…?
皆さんもご存じの観光庁と農水省がそれぞれ音頭をとっている「Go To キャンペーン」。現在、大手予約サイトの割引率の自主的な適用制限などをめぐって議論が起きていますが(2020年10月13日現在)、そのこと以前に、そのキャンペーン名称である「Go To トラベル」「Go To Eat」という表現自体に、違和感を覚えた方ものいるではないでしょうか?
「そんなことどうでもいいじゃん。細かいやつだな」「いるんだよねー、こういううるさい人」
…そんな声も聞こえてきそうですが、個人的にはやはり気になったので、ひとこと書かせていただきます。
そもそも「Go To」の後には通常「名詞」が目的語として来ますよね。それも地名・行先が来るのが普通です。
例:I go to Kyoto. 「私は京都へ行きます」
今回のキャンペーン名の場合、「Go to ~」という、命令形(Let's~に近いニュアンスで)に見える使い方をされているようですが、その場合、簡潔に文を切るためにも「to」の後はやはり地名・目的地名(名詞)が来るべきかと思います。
そしてこの場合、目的語として置かれているのが「トラベル」「Eat」という語。この文脈からすれば、これらの語は「名詞」扱いとみるのが妥当です。
そうすると、「"トラベル"(という目的地)へ行こう」「"Eat"(という目的地)へ行こう」というニュアンスの解釈となり、奇妙な訳が成り立ちます。
「旅行しに行こう」「食べに行こう」という、人を(こうした活動へと)いざなうニュアンスであれば、ふつうはそれぞれ、
Go travel(l)ing / Go on a trip
Go eat (まれにGo eating)
(*「I go to eat.」だけでも文法的には成り立つ、という見解もありますが、「eat」の後に目的語がないといのは、実際ネイティブの感覚からすればやはり?なのではないでしょうか…)
↑とすれば良いわけで、あえて「to」とする意味が分かりません。観光庁、農水省のウェブサイトをみても、特に名称決定にいたる経緯説明のようなものはみあたりません…。
あえて「go to travel」「go to eat」という表現を使用するのであれば、「to」は目的の不定詞「~するために」という用法と解釈したうえで、以下のように「go out」などとし、「~するために外出する」という意味を持つように使用するのが適当ではないでしょうか(まあ以下の例も、不自然ちゃ不自然ですが…)。いずれにしても、特にeatの後には目的語がないと何となくおさまりがつかないですよね…。
I go out to travel Kyoto.
I go out to eat something.
まさかお役所は、以下のようなニュアンスでこれらの名称を決定したわけでもないですよね…?
Go! To travel.→「行こうよ! 旅しに」
Go! To eat.→ 「行こうよ! 食べに」
勝手なことを書き連ねてしまいましたが、いずれにしても、個人的には「sounds funny」(不自然な感じがする)な印象のある名称です。お役所の見解がぜひとも聞きたいところです…。
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ことば(日本語、英語、その他外国語)、文化のちがいなどについてつぶやきます
約20年、言語関係、国際交流関係の仕事に関わってきました。仕事などを通じてこれまでに思ったことや今考えていることなどを、(日本から)つぶやきます。
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