コトノハ雑記帳 ~ことば、文化のあれこれ語ります

外国語、異文化交流の仕事に関わりはや20年。日本にいて日々感じる、日本語、外国語、文化の違いなどについてつぶやきます。

Go to トラベル, Go to Eatという名称について ~ やっぱりヘンじゃない…?

皆さんもご存じの観光庁農水省がそれぞれ音頭をとっている「Go To キャンペーン」。現在、大手予約サイトの割引率の自主的な適用制限などをめぐって議論が起きていますが(2020年10月13日現在)、そのこと以前に、そのキャンペーン名称である「Go To トラベル」「Go To Eat」という表現自体に、違和感を覚えた方ものいるではないでしょうか?

 

 「そんなことどうでもいいじゃん。細かいやつだな」「いるんだよねー、こういううるさい人」

 …そんな声も聞こえてきそうですが、個人的にはやはり気になったので、ひとこと書かせていただきます。

 

そもそも「Go To」の後には通常「名詞」が目的語として来ますよね。それも地名・行先が来るのが普通です。

 

例:I go to Kyoto. 「私は京都へ行きます」

 

今回のキャンペーン名の場合、「Go to ~」という、命令形(Let's~に近いニュアンスで)に見える使い方をされているようですが、その場合、簡潔に文を切るためにも「to」の後はやはり地名・目的地名(名詞)が来るべきかと思います。

そしてこの場合、目的語として置かれているのが「トラベル」「Eat」という語。この文脈からすれば、これらの語は「名詞」扱いとみるのが妥当です。

そうすると、「"トラベル"(という目的地)へ行こう」「"Eat"(という目的地)へ行こう」というニュアンスの解釈となり、奇妙な訳が成り立ちます。

 

「旅行しに行こう」「食べに行こう」という、人を(こうした活動へと)いざなうニュアンスであれば、ふつうはそれぞれ、

 

Go travel(l)ing / Go on a trip

Go eat (まれにGo eating)

(*「I go to eat.」だけでも文法的には成り立つ、という見解もありますが、「eat」の後に目的語がないといのは、実際ネイティブの感覚からすればやはり?なのではないでしょうか…)

 

↑とすれば良いわけで、あえて「to」とする意味が分かりません。観光庁農水省のウェブサイトをみても、特に名称決定にいたる経緯説明のようなものはみあたりません…。

 

あえて「go to travel」「go to eat」という表現を使用するのであれば、「to」は目的の不定詞「~するために」という用法と解釈したうえで、以下のように「go out」などとし、「~するために外出する」という意味を持つように使用するのが適当ではないでしょうか(まあ以下の例も、不自然ちゃ不自然ですが…)。いずれにしても、特にeatの後には目的語がないと何となくおさまりがつかないですよね…。

 

I go out to travel Kyoto.

I go out to eat something. 

 

まさかお役所は、以下のようなニュアンスでこれらの名称を決定したわけでもないですよね…?

 

Go!  To travel.「行こうよ! 旅しに」

Go!  To eat.「行こうよ! 食べに」

 

勝手なことを書き連ねてしまいましたが、いずれにしても、個人的には「sounds funny」(不自然な感じがする)な印象のある名称です。お役所の見解がぜひとも聞きたいところです…。